九月の終わり、ハルは庭のすみで小さなかごを見つけた。中には鈴虫が二ひき、じっとしている。となりの家のおばあさんが、置きわすれていったらしい。
ハルは家に持ち帰り、ナスのきれはしを入れてやった。夜になると、リーン、と一ぴきが鳴いた。となりの家の明かりが消えるまで、ハルはふとんの中で耳をすませていた。
つぎの日、もう一ぴきは動かなくなっていた。残った一ぴきは、かごのすみで体をちぢめている。母さんに見せると、「鈴虫は本当はもっと広いところで鳴くんだよ」と言った。
ハルは少し考えて、かごを庭のしげみに持っていった。ふたを開けると、鈴虫はゆっくりと出てきて、草の中に消えた。
その夜、まどを開けると、どこか遠くから細い音が聞こえた気がした。リーン。ハルはふとんの中で、目をつぶった。さびしさより、あんしんの方がすこし大きかった。